2020/02/20
~経費吸収か経口吸収か~
ここまで食物連鎖の一環としての人間、また生物界の食物の多様性という観点から人間の食生活を考えてきましたが、さまざまな生物の間には相違点ばかりではなく共通点もあるのです。例えば全ての生物は細胞からできています。しかも全ての生物は最初たった一個の細胞から進化し分化してできたと言われているのです。その証拠に、あらゆる生物の遺伝子は、チミン、グアニン、アデニン、シトシンという四つの物質でできています。つまり、遺伝情報を書き綴る文字はアメーバーから植物人間に至るまで共通なのです。
こうした事情を反映してか、細胞が養分を吸収するやり方はどれも非常に似ています。確かに一見したところでは、植物の根と動物の胃腸が似ている点を見つけるのは難しいでしょう。しかし、外界からの水分や養分を取り入れるために植物の根にびっしり毛根が付いているのと同じく、腸の表面には隙間無く絨毛が植わっています。共に養分と触れ合う場所を最大にする工夫です。つまり植物の根がそのまま裏返しされたものは、動物の胃腸なのです。また動物は経口吸収を行うと言われていますが、生物にとっては経皮吸収が基本なのであり、動物も例外ではありません。動物の食道から胃腸に続くいわゆる消化管はその動物の受精後の発育過程で外胚葉から落ち込んでできたものであり、いわば皮膚と同じ成り立ちを持った機関なのです。したがって吸収様式はアメーバーも植物も人間も異なるところはないと見ることもできる訳です。余談ですが、消化管と皮膚の発生が同じところから、消化器の故障は敏感に皮膚に現れてきます。『皮膚は内臓の鏡』というのは単なるキャッチフレーズや、花言葉ではなく原理を言っているのです。
また、この『共通の吸収様式』ということから生まれてくる食事の仕方の大切なポイントが一つあります。それは、どの生物も養分を『水溶液』の形で摂っているということです。固形物を直接体内に取り入れている生物はいません。
したがって、食事の時よく食物を噛み砕いてやることが消化液と食物を触れ合わせ、体内に取り入れられる形にする大前提となります。食事はよく噛んで食べましょう。